02. 議員定数の配分法
- 図を用いた、ドント方式とサンラグ方式の分り易い説明 -

ドント方式

ここでは, 選挙の比例代表制において使われているドント方式を, 図を用いて分り易く説明しましょう. やりたい事は簡単です. 例えばA, B, C, Dの4党があり, 選挙での得票数が例えば13票, 11票, 7票, 3票だったとします. この4つの党に総議席数6を割り当てるとしたら, どの党に何議席割り当てるのが良いでしょう? 割り当てる議席数の比率は, できるだけ13:11:7:3に近くしたいというのがポイントです. 日本の比例代表制において用いられているのはドント方式と呼ばれるものであり, ビクトルドントによって考案されました(ジェファーソン方式ともいう).

ドント方式は, 次のように説明することができます.

まず長さ1の棒を, 各党毎に用意する.
A党は13票を得たので, 長さ1の棒を等間隔に13個に分けて刻み目をつける.
B党は11票を得たので, 長さ1の棒を等間隔に11個に分けて刻み目をつける.
C党は7票を得たので, 長さ1の棒を等間隔に7個に分けて刻み目をつける.
D党は3票を得たので, 長さ1の棒を等間隔に3個に分けて刻み目をつける.
4本の棒を平行に並べて, 左から6個目まで(総議席数が6)の刻み目を見て, それぞれの対応する党の議席とする.

具体的には以下のようになります.

A党

  1 4 6 (9)                

B党

  2 5 (7)              

C党

  3 (8)        

D党

  (10)  

各党の獲得議席は、以下のように求められます.

1番目の刻み目は, Aの1/13(≒0.0769)の刻み目である.
2番目の刻み目は, Bの1/11(≒0.0909)の刻み目である.
3番目の刻み目は, Cの1/7(≒0.1429)の刻み目である.
4番目の刻み目は, Aの2/13(≒0.1538)の刻み目である.
5番目の刻み目は, Bの2/11(≒0.1818)の刻み目である.
6番目の刻み目は, Aの3/13(≒0.2308)の刻み目である.
以上よりA, B, C, D党はそれぞれ,(3,2,1,0)議席を得る.
もし総議席数が7ならば, 7番目の刻み目は, Bの3/11(≒0.2727)より, B党がさらに1議席もらえる.

とても簡単な方法ですね! それぞれの棒の刻み目の間隔が, 得票数の逆数になっていますので, 各党の獲得議席数の比が, 得票数の比に近くなりそうな気が, 確かにします.

ドント方式の従来の説明とだいぶ違うのですが, ホントにこれで正しいのですか?

ちなみに, 多くの場合ドント方式は以下のように説明されます.

「各政党の総得票数(候補者名の票数+政党名の票)を1, 2, 3, 4, ... の整数で除し, その商をすべて比較して, 大きい順に議員定数に達するまで選び, 選ばれた商の数をもってその政党の当選人の数とする方法.」

H19参議院選挙特集(練馬区選挙管理委員会)のHPの例を以下につけてみます.

例)定数6人とした場合...

政党(総得票数)

割る数

●●党
(450万票)
▲▲党
(320万票)
××党
(200万票)
1 <1>450万票 <2>320万票 <4>200万票
2 <3>225万票 <5>160万票 100万票
3 <6>150万票 106.6万票 66.6万票
4 112.5万票 80万票 50万票









⇒●●党は, 3つの商が選ばれている = 当選人数 3人 ということになる.

  ▲▲党は, 2つの商が選ばれている = 当選人数 2人 ということになる.

  ××党は, 1つの商が選ばれている = 当選人数 1人 ということになる.

上記の表では, 各党の得票数を1, 2, 3, 4,...の整数で割った値を書いて, 大きい順に議席を割り当てています. この票の数値をすべて逆数にして, 小さい順に割り当てても同じことですね. これは, 各党について, 1/得票数, 2/得票数, 3/得票数, ...の値を書いて, 小さい順に議席を割り当てていることになります. これは, 上記の説明で, 刻み目の場所を左から見ているのと同じであることはすぐ分るでしょう.(上記のHPの例を, 棒を使って説明しようとすると, ●●党は長さ1の棒を450万分の1, ▲▲党は320万分の1, ××党は200万分の1するので, 相当拡大しないと絵に描けません.)

 

質問1: 刻み目を数えていたら, 棒の右端を出てしまったらどうしたらいいのですか?

回答: 投票総数より総議席数が多いなんてことは通常は無いので, そんな心配は無用なのです. どうしても必要ならば, 同じ間隔で刻み目をつけた棒を更に右に足せば, 手続きとしては問題ありません.

 

質問2: たまたま2つ以上の刻み目が同一の場所にあったらどうするのでしょう? 複数の刻み目の場所が一致している場所で総議席数が達成される場合は, どの党に議席を割り当てるか, 問題が起きる可能性があります.

回答: 法律ではそんな場合は「くじ引き」をして決めることになっているようです(「公職選挙法」第95条3項2号:「二以上の商が同一の数値であるため・・・選挙会において, 選挙長がくじで決める」).

 

サンラグ方式

ドント方式は, 得票数の多い党に有利と言われます. 上記の数値例では, 得票数最小のD党は, 総議席数が10以上ないと議席がもらえません. これに対し得票数の少ない党が, 最初の1議席を獲得し易いといわれるのがサンラグ(1)方式です(ウエブスター方式とも呼ばれる). 発想は単純です. 各党の棒の「最初の刻み目までの左半分」を切り落として, 左端が揃うようにずらすのです. あとは, ドント方式と同様に, 左端から総議席数に達するまで刻み目に対応して議席を各党に与えます.

具体的には, 以下のようになります.

A党

  1 4                      

B党

  2 5                  

C党

  3            

D党

  6    

すると, 各党の獲得議席は以下のように求められます.

 

1番目の刻み目は, Aの(0.5)/13(≒0.0385)の刻み目である.
2番目の刻み目は, Bの(0.5)/11(≒0.0455)の刻み目である.
3番目の刻み目は, Cの(0.5)/7(≒0.0714)の刻み目である.
4番目の刻み目は, Aの(1.5)/13(≒0.1154)の刻み目である.
5番目の刻み目は, Bの(1.5)/11(≒0.1363)の刻み目である.
6番目の刻み目は, Dの(0.5)/3(≒0.1667)の刻み目である.

 

以上よりA, B, C, D党はそれぞれ, (2,2,1,1)議席を得る.

 

サンラグ方式の従来の説明とだいぶ違うのですが, 大丈夫なんでしょうか?

サンラグ方式は, 多くの場合次のように説明されます. 「ドント方式では÷1, ÷2, ÷3と割って議席を確定していくところを, サンラグ方式は÷1, ÷3, ÷5...と順に奇数で割って, 大きいものから議席を割り当てる方法を取る. 」これについても, 逆数をとって小さい順に議席を割り当てると考えれば, 各党について, 1/得票数, 3/得票数, 5/得票数, ...の値を求め, 小さい順に議席を割り当てていることになります. ここで, 逆数をとった際に, 更に2で割っておけば, 各党について, (0.5)/得票数, (1.5)/得票数, (2.5)/得票数, ...の値を求め, 小さい順に議席を割り当てていることになります. これが, 上記の刻み目を左から見る方法になっているのは明らかですね.

 

質問3: ちなみに, サンラグ方式で奇数で割っているところを偶数で割るという方法は何故使われないですか?

回答: 上の棒を使ったやり方で理解をしていれば, 答えは簡単に分りますね. そう, 使われてないのではなく, ドント法に戻ってしまうだけです.

 

修正サンラグ方式

北欧の国政選挙で使われているものに, 修正サンラグ方式があります. サンラグ方式は得票数の少ない党に「有利過ぎる」として, 提案されたもののようです. これは, 次のように説明されます. 「修正サンラグ方式ではサンラグ方式で最初に1で割るところを1.4で割る.」もう説明は簡単ですね. これは, サンラグ方式で用いた各棒において「最も左の刻み目((0.5)/得票数 の位置にある)のみを, (0.7)/得票数 の位置へ, 少し右へずらす」とういう操作をしたものを使います(各棒の左から2番目以降の刻み目は, サンラグ方式と同じ位置です). 左端から見た時の最初の刻み目のみが少し右にずれますので, 得票数の少ない党が, 最初の1議席を獲得する傾向が, サンラグ方式より少し減ると予想されるわけです.

 

質問4: なんで選挙の話題を, 情報の先生が書いているのですか?

回答: 情報というと, 計算機を使う勉強をするところ, といったイメージが強いかもしれませんが, そうではありません. 計算の手続き(アルゴリズムという単語の方が分り易いでしょうか)が関係する分野ならば, それはもう情報の範囲です. 実際に, 上記のドント方式やサンラグ方式の改良法が, 情報系の研究者によって研究されています. また, 1票の格差の小さい選挙区の区割の問題(最適選挙区割問題), なども情報系の研究者によって取り組まれています. また, 私自身も, 各政党の議席数から本来の力を計算する「投票力指数」とよばれるものの計算法を研究しています. 情報といっても, そのカバーする範囲は非常に広いのです.

 

(1) André Sainte-Laguëによるサントラゲと書く方もいるが, サンラグの方が本来の発音に近いと思われる.